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【2002年7月17日】
震災当日の検証に協力を──神戸大、遺族への聞き取り進まず(7月17日)

震災被害者の聞き取り調査について打ち合わせをする学生(16日、神戸市灘区の神戸大学)
震災被害者の聞き取り調査について打ち合わせをする学生(16日、神戸市灘区の神戸大学)
 6400人を超える死者を出した阪神大震災を検証しようと、神戸大学(神戸市)の研究室が10年計画で取り組んでいる遺族への聞き取り調査が難航している。調査開始から4年になるが、転居などで追跡が年々難しくなっており、集まった記録は犠牲者約300人分にとどまる。研究室のメンバーは「一人ひとりの亡くなった状況を克明に記録することが、後世への教訓になる」として協力を呼び掛けている。

 調査を進めているのは神戸大学・都市安全研究センターの室崎益輝教授、工学部の塩崎賢明教授らでつくる「震災犠牲者聞き語り調査会」。

 震災直後の記録を基に学生が2人1組で遺族を訪問。亡くなった際の具体的な状況を把握するため建物の壊れ方や間取りなどを聞き取り、犠牲者の生い立ちや人柄にも踏み込んで、震災当日を「再現」しようと調査を進めている。

 時には遺族が思い出したくない記憶を呼び覚ますことにもなり、「1人の遺族に調査への協力を依頼してから実際に話を聞き、記録をまとめるまでに3、4カ月かかることもある」という。

 研究室は犠牲者全員の記録を掘り起こすことを目指しているが、遺族の連絡先がほとんど把握できず、調査は壁に突き当たっている。神戸市など各自治体でも「仮設から復興住宅へというように相当数が引っ越しており、遺族すべての連絡先は分からない」という。

 遺族同士のつてなどを頼りに捜し歩いているのが実情で、昨年1年間で話が聞けたのは約30人。このため、研究室では今年4月に開館した「人と防災未来センター」(神戸市)にチラシを置いて協力を求めている。

 当時14歳の我が子を失い、調査に協力した母親は「一瞬にしてすべてをなくし、やりきれない。1人を失えば、その家族それぞれの幾つもの悲しみや思いがある。こんな思いを後世に残したい」との回答を寄せた。

 調査に当たる学生の多くは建築学を専攻。室崎教授は「建築家が設計した建造物が倒れ、多くの人が亡くなった事実を学ぶためには、圧死が8割を超えるという数字だけでなく、犠牲者一人ひとりの状況に触れることが重要」と話している。

 連絡先は震災犠牲者聞き語り調査会電話078・803・6009まで。



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http://www.nikkei.co.jp/kansai/news/


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