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第59回MURオープンゼミナール
日 時 2003年2月15日(土曜日) 13:30~15:05
内 容 国内外の大規模災害後の住宅復興について
越山健治 人と防災未来センター(DPI)専任研究員
場 所 神戸大学工学部3号館125室(参加24名)
国内外の大規模災害後の住宅復興について 越山健治

<報告>
●災害後の都市復興とは? 住宅被害が多面に関わる
住宅再建 日本では先進国タイプ
都市復興との関係 戸数計算だけでない供給方法が必要
●復興住宅の特徴(ハード整備、資金提供)
メキシコ地震(1985年)の住宅復興(ハード整備)
 自力再建層 31%
 自力再建困難者層 50%
 その他 19%
 被災場所に建設(郊外型の方が建設コストがかかる、交通手段)
 借家層を持家層に(公的に建設→買い易く分譲)
 建設プロセス、住戸計画に住民参加(NPOが大きく貢献)
 5万戸を2年間で供給した。
トルコ地震(1999年)の住宅復興(ハード整備)
 3年間で4万戸供給 被災地から遠くに建設
 郊外大規模住宅の供給(ニュータウン開発として)
 原則持家層への支援(住宅保有者の持つ権利、財産補償)
 被災した建物がマンションタイプの住宅
阪神・淡路大震災の住宅供給
 公的賃貸住宅の大量供給
 (世界に例が少ない、公営住宅住宅には持家からの転換も多い)
 従前建物の建設が難しい(既存不適格住宅が被害)
 仮設住宅から公営住宅へ(単線的な流れ)
日本の復興公営住宅
 人と防災未来センターで現在調査中 
 対象団地328団地(全団地398団地)
 調査内容 団地環境調査
        質問調査(約17500程度回収、約6割の回収率)
        自治会長ヒアリング(90団地) 
        支援者(LSA、SCS、その他)質問紙(約180団地)
 以上でコミュニティの把握をはかる。
 対象団地の分布 意外と郊外型は少ない 被災地に建設が多い
 しかし、その場の人が入ったかというとそうではない。
   規模 小さな団地もたくさんある
 現在抱えている問題 
   高齢化 人口の半数以上が65歳以上の団地が25%
   団地環境 ゴミ置き場 団地規模が大きいほどきれい
          (大規模団地では、業者で行っている。)
          樹木、緑、手入れ(7割程度がきれい)
   団地環境と団地規模(20戸以下汚い、50-100戸きれい)
   団地規模と共用空間状況(100-200戸が良い状況)
   因子分析 6因子で7割評価できる。
    第1因子 集会室・案内板の有無
    第2因子 公園・樹木・ゴミ置き場のきれいさ
    第3因子 通路など 第4因子 ・・・・
●論点
 コミュニティ環境
   コミュニティは「共有感」があって発生する
   空間や場を「わがこと」として意識すること
   以上は、今後の災害時の住宅供給を考える受けで重要
  持家だと「共有感」がある。
   メキシコ、トルコでは持家となっているのでその後の復興に
   よい影響を与えたと考えられる。
<議論>
「住宅再建が重要」と「コミュニティが大切」はどうつがなるのか。
←供給の中味として関連している。
震災後の再建、人、くらし、の総体としてとらえるべき。日本は戸数というハードに目を奪われて、生活を見ていなかったのではないか。メキシコは単に箱物を作ったのではない。
←箱ものを供給するだけで終わりでない。今の公営住宅、問題に対してあとづけ。あらかじめ、メニューに加える必要がある。
トルコの賃貸住宅の居住者はどのようになっているのか。
←別の賃貸に入る(トルコ、台湾の考え方)
 日本の考え方は、持家は金持ちで支援の必要はないとしている。
 (日本は、先進国といいながら、現物支給的)
 イタリアではどのようになっているか。
 このあたりの違いはどこから。
←イタリアでは、お金をわたす(個人補償)。
 日本は、一見資本主義だが、社会主義、全体主義的。
 政府の論理に後進性があるのではないか。
 「私有財産にお金をださない」という発想は、
  なぜ日本ではびこるのか。
←日本の法律の根源、プロシアに論理があるのでは?
 実態として、破綻、瓦礫排除にお金、耐震補強にお金
 仮設、公営住宅から一歩もでない。
海外の事例で、瓦礫の撤去などで仕事が発生していることは?
←メキシコの場合は、建設プロセスで仕事ができた。
  トルコでは、きちんと建てる必要なので免許を持っている人だけ
日本でも、復旧事業で地域で立ち上がるということはあった。
神戸の場合、グローバル経済化でうまくいかなかった。
台湾では、うまく仕事をまわしている。
←次は政策的にどのようにするか。
復興住宅には特優賃は入っているか。
←入っていない。
メキシコで被災場所に建設、とあるが土地の確保はどうだったのか。
 トルコでは、公有地。メキシコでは強制収容。
 日本では、民間賃貸の買い上げもある(戸数の小さいもの)
入居者の年齢層がポイントではないか。
 日本では高齢者が特にきびしい被災を受けたことによる。
 都市部に高齢者だけの世界はすくないのではないか。
 高齢者が多いと、戸数プラスアルファが必要となる。
←30代、40代、50代に日本は手当てをしていないという
  問題がある。バランスよく、各世代を団地に入れて
  コミュニティを成立させるべきである。
ソフト面で、トルコ、メキシコはどのようにしていたのか。
 トルコ、メキシコでは大家族であり、それでカバーされている。
 戦前の日本の状況にあてはまる。
コミュニティについて、どのくらい中で交流しているのか
 立木先生によると、個々人におちる。
 個々人がその意識があると、地域に広がる。
←社会学の人たちは、ハードな面との関係を読めない。
 それは、規模の論理なのか、規模と構成(環境の作り方)
 が重要な面がある。
このような団地環境について満足しているかどうかは聞いているか
 別の調査で、ヒアリングで「いきいき回答」が満足。
 公営住宅に入った直後、不満だったが、
 今では満足している人が多い。
中年世代 精神的なストレス
 公営住宅への入居基準の改正が重要
 高齢者の心の問題はおさまりつつあるが、
 子供の精神が癒されていない
復興では、学校など、子供を重視することが重要ではないか。
 台湾では、立派な小学校を作っている。
 子供のいる親の世代が仕事がなく、住むところがない、
 そのあたりのサポートが必要。
住んでいる人から何ができるか。
 賃貸となると、むつかしい。種がない。
 まちづくりと、住宅の再建をどうつなげるか。
 みんなが散ってしまっては、どうしようもない。
 まちづくりのひとは、借家の人をわすれてしまっている。
買い上げて売り戻すシステム(メキシコ、奥尻)を
うまく使う必要がある。

(以上、記録 北後)

今回のオープンゼミナールは、都市安全研究センターの特別講演会として実施しました。
連絡先:神戸大学室崎・北後研究室
     TEL 078-803-6009 または 078-803-6440
MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。


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