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第58回MURオープンゼミナール
日 時 2003年1月11日(土曜日) 13:30~14:30
内 容 台湾地震後の住宅復興の現状と問題点(室崎益輝)
場 所 神戸大学工学部LR101教室(参加16名)
台湾921地震後の住宅再建の現状 室崎益輝

<報告>
1.台湾地震における住宅再建の特質
● 柔軟で迅速な立ち上がり 応急対応最優先の対応
震災直後に、仮設住宅など評価された点があったが、現状では問題点が生じている。
・仮設住宅から次に移る先がない。
(快適に作ったので、出て行く気がしない。)
・住宅補助金(家賃補助)が、生活費に回ったり、簡単な(劣悪な)復興住宅の建設が行われた。
・恒久的な対応は後回しになっている。
しかし、以下の良い点もある。
・コミュニティの崩壊はない。
・復興のスピードが速い。
家賃補助の利用方法は、
4分の1の人は、家賃として、
4分の1の人は、将来の再建のために貯金、
4分の1の人は、庭に仮設的な住宅、
4分の1の人は、飲み食いに使った。
● 民間や市民の力を誘発
市民力の発揮があった
行政は最小限の資源提供
● 復興まちづくりと連動
都市部では、ほとんど失敗 民意を集めるのが困難
農村部では、20例くらいうまく行った
 (産業、村おこしと一体で)
● 的確迅速な数量の把握
地震後、毎日、その後、1週間ごとに、数量把握結果が公表された

2.台湾における住宅再建の現状
全壊5万戸(その内、修理したものあり)、半壊5万戸
● 集合住宅の再建
 全壊177棟、1万2千戸 半壊151棟、1万8千戸
 うち、19棟が再建済み、11棟が着工済、46棟が調整済、
     5棟が再建断念
● 個人住宅の再建
 全壊2万7千戸 半壊2万7千戸
 うち、ほぼ7割が再建、修理完了
● 賃貸層・仮設住宅の再建
 2,893戸が、今も仮設住宅に居住

3.新しい動き
●新社区 (公営住宅団地) 10地区
 入居 マンション再建困難者
 危険地区には高層住宅を建てないという規制の受け皿
 低所得者のための住宅(賃貸の公営住宅)

4.教訓と課題
● 応急から恒久への連続性をどう確保するか?
● 地域の産業や雇用との連携をどう確保するか?
● 被災者の自発的なエネルギーをどう引き出すか?
● 理想的なまちづくりにどうつなげていくか?

<議論>
今でも、市民の力は続いているのか?
→ 学校の建設などに、民間の力がいっている。
   しかし、個人の住宅にはまわらない。
弱者対策は?
→ 今回訪問した時、協調されていた。弱者優先枠など。
仮設住宅が問題というのは? ある程度居住性がよければ、10年くらい住んでいてもよいのでは?
→「行政として」、以下の問題となっている。
・民有地の占拠
・家賃補助との公平性
 仮設住宅に住んでいる人に対しての賃貸住宅
 空いている民間の分譲住宅を買い取って、賃貸住宅とする動きがある。そこに、仮設住宅の人に入ってもらうことになっている。

<案内>
アジア防災会議2003 神戸国際会議場
2003年1月16日 14:00~
 地球との共存 しなやかな防災 シンポジウム
 コーディネータ 河田、ケン・トッピング

メモリアルカンファレンス 海洋博物館 
2003年1月18日

(以上、記録 北後)
連絡先:神戸大学室崎・北後研究室
     TEL 078-803-6009 または 078-803-6440
MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。


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