戻る

第56回MURオープンゼミナール
日 時 2002年11月16日(土曜日) 13:30~15:00
内 容 復興8年の検証について(室崎)
場 所 神戸大学工学部LR101教室(参加17名)
復興8年の検証について 室崎益輝

<報告>
●10年まであと2年
 10年で一区切りのことがたくさんある
  行政面の特別な措置がなくなる
  区画整理などの一区切り
  非常から日常へ
  救済から予防(南海地震など)への転換
  局地から広域へ(被災地だけから、県内全域、日本、世界へ)
●10年の2年まえから、助走期間として考える必要がある
 (10年までの課題)      (10年以降の課題)
  被災からの早期の回復 → 震災からの教訓の伝承
  安全な都市社会の構築   安全な都市社会の構築
  未来に向け理想の追求   未来に向け理想の追求
●復興検証の視点もしくは視座
  次ぎの4つの指標でとらえる
 (1)教訓を正しくとらえているか?
   2種類の教訓
   震災の教訓 → なぜ6千人の人が死亡したか
   復興の教訓 → 復興の中で生れた新しい芽を育てる
            → (自助、共助、公助)
  何を震災の教訓として伝えるのか
              人と防災未来センターの役割
   伝えなければならないこと
   1.自然のこわさ、自然の摂理
   2.人間のすばらしさ、助け合うことの必要性、
       コミュニティの大切さ
   3.被災のつらさ、悲しさ → 防災のバネ
       ← 聞き語り等によって、悲しみを訴える
   4.震災の原因を伝える、人間のおろかさ → 防災の方向
      壊れやすい住宅、人口構築物のメンテナンスの悪さ
     (3、4ができていない。)
        間違った情報のはびこり
       「震災の教訓のうそとほんと」
 (2)救援と回復の到達度
   回復の達成率は何ではかれるか
    人口と住宅戸数だけ戻った
    その他の指標は戻っていない
   「回復のスピード」が問題となる
    再開発事業は、時間がかかる
    10年目に再開発が終わるかどうかのスピード
    時間のかかる方法はほんとによいのか
 (3)危機と災害の防備度
   次ぎの災害が来た時、何人の人が亡くなるか
   危機管理の文化が定着したか
   安全空間の構築が進捗したか
  (結局、元通りの「危険な」まちになってしまったのではないか。)
 (4)理想と希望の獲得度
   旧弊を脱却する素地がつくられたか
    原因に「現象的なもの」と「根源的なもの」がある。
         古い         暮らしの作法が確立していない
         白蟻         受験偏重、たれ流しの文化
    本質的な問題点に取り組むことが出来ているかどうか
    開発優先、効率(20世紀の文明)、コルビジェの超高層
    それの副作用が、災害の温床となった
   未来を展望した取り組みが定着したか
●以上の確認のもとに、それでは何を行うか
  復興検証のテーマ、もしくは、項目
 (1)安全の文化
    文化に変える 制度(住宅再建、復興法、メンテナンス法)
              様式(空間の形、都市の形、親水空間)
              習俗(コミュニティルール、暮らし方)
 (2)社会の組織 新しい社会のシステム、しくみ
              安全の担い手になるかどうか
 (3)都市の構造 持続性、自立性、多元性
              コンパクトシティ、サステナブルコミュニティ
              せせらぎの水路など、将来につながる芽
 (4)減災の態勢 組織、装備、計画
              地域防災計画で一見変わっているが・・・
 (5)教訓の伝承 記録、発信、伝承
    人と防災未来センターの問題点
      場所から切り離されて、ものを飾っているのみ
●おわりに
 21世紀は大変な時代で、はたして危機を乗り越えられるのか?
 温暖化の問題、
 人間社会そのものの問題、犯罪、モラルハザード
 構築環境の危機(メンテナンスの費用がなく疲弊)
 その他
<議論>
●津波災害、防潮堤がつぶれない事が前提なのですが、考えると恐ろしい。
●自主防災で消すことについては、コミュニティの再現が重要と考える。
  ← 情緒的に語られることに問題、お互いにもたれあってしまう
  ← あんこの部分は、市民が取り組む必要、行政支援も必要
    (しかし、すべて、自主防災というのはまちがい)
  「自分たちの町は自分たちでまもる」は、いいが、その上に、
  →「自分たちでつくる」を加える。

(以上、記録 北後)
連絡先:神戸大学室崎・北後研究室
     TEL 078-803-6009 または 078-803-6440
MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。


ご案内:2010年度までのアーカイブHPを表示しています。2011年度以降のHPを表示する▶