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第51回MURオープンゼミナール
日 時 2002年 4月 6日(土曜日) 午後1時30分~3時
内 容 明石歩道橋事故における群集流動解析 室崎益輝
場 所 神戸大学工学部LR104教室
明石歩道橋事故における群集流動解析

調査委員会の報告書は、次ぎの3部からなる。ここでは、第2部を報告します。
 第1部 事故調査
 第2部 技術解析
 第3部 提言

第2部の内容
 群集流の実態
 群集圧力の推定
 群集雪崩がなぜ起きたか

第1章 どれだけの人が来たか
 10万~15万人で計画、
 実際には、ピーク時に8万人いた。
 (集めた写真で頭数を数えた。写っていない子供の数は推定)
 夜店の部分、平米あたり、7人だった。(身動きが出来ない状態)
 (環境棟のエレベータで5人に相当する。)
 満員電車 阪急で10人/㎡
 3人/㎡くらいから危険になってくる
 一般には、5人/㎡ 危険になる、規制をかけないといけない
 講義室は、1~1.5人/㎡

第2章 歩道橋にどれだけ人がいたか
 転倒した部分では、13人~15人/㎡だった。
 (15人/㎡の状況と証言が一致)
 推定方法
  a.流入者数と流出者数の差
  b.群衆歩行速度のデータから算定
  c.混雑の状態と群衆密度の関係から求める
 a.
 (入口側)
 駅からの流入 1万7千7百人程度(計画では、4万人)
  ホーム、駅の設備の容量で制限されていた。
 JRで来た人8割、バスで来た人などを加える
 → 歩道橋への流入者の推定値
    ピークで173人/分
    歩道橋の幅は6mで1.5×6×60=540人/分で入れる
    したがって、すいすいと人が入ってこれる状態
 (出口側)
    階段3m(270人/分)の容量がある。
     173人と比べると流れるはず
    歩道橋南端部、階段南側から花火が良く見える
    →立ち止まり。加えて、階段下の夜店の混雑
    →階段を通れた人数の制限
    ピークで120人/分だんだんと低下
 (歩道橋上の滞留の数)
    20:50で、6400人(プラスマイナス1000人)
 c.
 NHK調査(300人対象)、明石市調査
  歩きやすさについてアンケート
    普通の歩行ができる ~ 動かない → 密度の推定
  これで人数を推定すると6450人
 b.群衆歩行速度のデータからの推定
 歩行速度の分布 → 取り残された人の推定 5500人と推定

第3章 第2章の補足 滞留人数の時間変化
 6時半から7時に急激に増えた
 あっというまに人があふれかえる。

第4章 力学モデル 人にどのような力がかかったか
 眼の高さまで人が重なっていた(7人分の積み重ね)
 橋の横の手すりの曲がり → かかった力の推定
  → 150kg/m
 群衆の力 南北方向に換算すると 400kg/m
 2~3人並んでいるとすると 150~200㎏/人 となる
 (医学的にみて失神、など)
 手すりの構造耐力 350~400㎏/m(1ヵ所壊れている)

第5章 群衆転倒事故のメカニズム
(将棋倒しは、ドミノ倒し  密度3人~5人/㎡程度で起こる。)
 群衆雪崩
  弥彦神社で群衆雪崩と言われているが、これは階段で、
 今回、平面で起きている(体が密着して体が浮き上がって起こる)
 空隙ができると、前から倒れる、多方向に倒れる
 これが、第5章の仮説
 これが、いろいろな証言にあっているか確認→すべて説明可能
 「ショックウェーブ」の用語は報告書には使われていない。
 空隙が起きた理由(推定、4つのうちどれか)
 ・小さな子供、お年寄りの倒れこみ
 ・角のフェンスが壊れることによる隙間
 ・「もどれ、もどれ」コールによる後ずさりによる隙間
 ・機動隊による整理(引っこ抜き)による隙間
(どれが原因でも、密度が上がっていることが原因で、どれでも雪崩が起こる。)

●歩道橋と会場周辺の形状
 限られたアクセス路
 通路と階段の幅員のギャップ
 チューブもしくは袋のねずみ構造(祇園祭りの場合は、路地に)
→ 橋の設計論への問題提起
 しかし、
 設計した人を責めるのは酷、設計条件と違う使い方が問題
→ 広域避難計画の時の通路について同様の問題がないか
●解析の素材となる資料と事実
 負傷者等の詳細な証言
 明石市職員や一般市民の撮影した映像
   写真がたくさんあり
   転倒時の写真、転倒直前の上からの写真
   関西テレビの視聴者のビデオ
    → 転倒した時刻
 JR朝霧駅自動改札の通過記録
 明石市や警察等の提供資料
●群集流動解析の基礎式
 歩行速度と群集密度の関係式
 通行量と速度・密度の関係式
 通行量と流動係数との関係式
 滞留と流入・流出との関係式
●群集解析の仮定とその精度
 仮定の信頼度をどう確認するか
   電車以外で来た人の数
 精度解析あるいは確率評価の必要性
   解析結果と証言とが、矛盾していない
   → 「仮定が正しい」と説明
●滞留人数と群集密度をどう推定したか
 流入と流出の差を求める方法
 歩行速度から取り残される人数を求める方法
 証言から密度を推定する方法
●群集なだれと将棋倒しの区別
 群集なだれとは?
 群集解析に力学モデル導入の必要性
●おわりに
 明石事故から何を学ぶのか?

(以上、記録 北後)
連絡先:神戸大学室崎・北後研究室
     TEL 078-803-6009 または 078-803-6440
MURオープンゼミナールは、広く社会に研究室の活動を公開することを企図して、毎月1回、原則として第1土曜日に開催しているものです。研究室のメンバーが出席するとともに、卒業生、自治体の都市・建築・消防関係の職員、コンサルタントのスタッフ、都市や建築の安全に関心のある市民等が参加されています。興味と時間のある方は遠慮なくご参加下さい。


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